2020年10月30日 ランジェリー
今回のインタビュー相手
大森夫妻は元下着会社出身で2013年に島根にIターンして独立・起業。そんな大森夫妻に独立起業されたきっかけや苦労したこと・やりがいなどについてお聞きしました。
もくじ
— (河本)本日インタビューアーをさせていただく河本です。よろしくお願いいたします。
— (松本)いつもありがとうございます。本日は改めて色々お話しお聞きかせください。
(大森夫妻)本日はよろしくお願いいたします。
現在しているお仕事について
— 今どんな仕事をされているのか簡単にお教えください。
(大森智彦さん)弊社は2013年に創業したオリジナルのランジェリーブランドです。
自分達で企画した商品の製造から販売までを自社で一貫して行っており、オンラインショップを通じて直接お客様のお手元に届けています。
— もともとどんなお仕事をされていたんでしょうか?
(大森智彦さん)元々私たち夫婦は大手の下着会社で働いていたときに知り合いました。私は新規開拓の部署でブランドの立ち上げを手掛け、マーケティングのデータ分析なども行っていました。
(大森由紀さん)私は元々ランジェリーデザイナーとしてスタートしました。
ヨーロッパのランジェリー展に何度か行かせてもらったこともあります。さまざまな会社に転職しながらキャリアを積み、創業する前は夫婦で同じ下着会社で働いていました。そこで夫婦で中国やインドネシアなど海外で仕事をしていました。
— そこからどんな経緯で独立起業することになったんでしょうか?
(大森智彦さん)妻とは出会った当初から、「いつか一緒にブランドができればいいね。」と話していました。当初、海外で事業展開しようと考えていましたが、海外情勢の変化などの理由で取りやめとなり日本に帰国しました。
この先どうしようと思っていたところ、島根県にある工場とのご縁をいただき、「いつか下着ブランドを立ち上げる」という私たちの夢をかなえるために、関西から地縁もない島根県益田市に転居して2013年に創業しました。
オレンジの花言葉に「結婚式」がありますが、結婚式での華やかな女性のイメージを込めたくてオレンジという言葉を使って「オレンジハーモニー」と社名を名付けました。
実際に創業して実感したこと
— オレンジハーモニーを創業後、実際に事業をやってみてどうでしたでしょうか?
(大森智彦さん)2014年に下着のネット通販を始めると、想定外のことも多かったです。
もともと下着会社で働いた経験から、日本女性はみんな自分の下着のサイズを把握しているという認識がありました。
だから、ネット通販だけでも良いと当初思っていたんですが、いざ販売を開始してみると、10人中8、9人は間違ったサイズを注文していることがわかりました。
(大森由紀さん)たとえば「ブラジャーはB75で、ショーツはLサイズ」と注文された方がいましたが、「絶対サイズ間違っているから、試着しに来てください」とお願いしました。結局、Gカップでした。
そこで、単にネット通販するだけではなく、購入前にフィッティングする必要があるわかりました。
サイズの合わない下着を長年つけて、手のしびれなどの症状が出ている方もいらっしゃいました。脇のリンパを圧迫してたんだと思います。正しいサイズでうちの下着をつけていただいてよくなったとのお声をいただきました。
(大森智彦さん)弊社ホームページの「ワイヤーブラの必要性」という記事内で「ブラジャー販売数サイズ比率」のグラフをご覧いただくと驚かれると思います。
GカップとFカップが圧倒的に多いんです。食べるものが豊かになっていることも原因だと思います。
とにかくフィッティングがちゃんとできていなくて、自分のサイズを間違っている方が本当に多いんです。
(大森由紀さん)食の欧米化でグラマーになっているのもありますが、冷えやすい体になり、胸に脂肪が蓄えられやすくなっているようです。
日本女性は骨格が細いのに胸は大きくなっています。サイズの間違っているワイヤーブラをつけて、ワイヤーブラに悪い印象をもたれていますが、とんでもありません。
GやFの大きな胸はちゃんと支えないといけません。フィットするワイヤーブラは必要なんです。ワイヤーブラが悪いのではなく、サイズが合ってないことが悪いんです。
(大森智彦さん)それで、購入前には必ず試着をしてもらう、試着なしでは基本的に販売しない、ということにしました。
試着会イベント「気持ちいい自分時間」について
— 試着会のイベント名が「気持ちいい自分時間」となっていて珍しい名前ですね。
(大森智彦さん)試着会のイベント名については、よく相談していたコンサルタントの方に「イベントに名前を付けた方がいいよ。『気持ちいい自分時間』はどうだろう」と名付けてくださいました。
— イベント「気持ちいい自分時間」ではどんなことをされているのですか?
(大森由紀さん)フィッティングしながら、サイズだけではなく、低体温や巻肩など体の様子で気になることはお伝えしています。
これまで4000人以上の体を見てきて服の上からでも骨格でサイズがわかるようになりました。試着ではメジャーで測りません。
— 見ただけでわかるんですね。どうやってそこまで詳しくなったんでしょうか?
(大森由紀さん)特別な勉強していませんが、二人の先生から体のことを教えてもらったことが役立っています。
一人は東洋医学の先生です。とてもいい先生で、「病院にこなくていいように、体がよくなる腹巻を作ってほしい」と要望されました。
腹巻を販売しているのは、この先生の提案があったからです。もう一人影響をうけたのはカイロプラティックの先生です。
おかげで、パッと見た瞬間に、この人は腰がずれているとか、ここが悪いとかがわかり、どんな体質かも言い当てることができるようになりました。
創業して苦労したこと
— 実際に創業してからどんなことに苦労しましたか??
(大森智彦さん)当時起業を始めた島根では下着販売のイメージはよくなかったので、そこからどうやって良い方向に認知を広めいくかに苦労しました。
当時高額な下着を強引な方法で販売する業者がいたこともあり、とにかくイメージが悪く、下着の販売と言うだけで「結構です」と話を聞いてもらえませんでした。
— その苦境をどのように乗り越えられたのですか?
(大森由紀さん) 転機は娘の保育園の園長先生との出会いです。
園長先生は大学院で保育の研究をされていて、子どもや母親のことをよくわかってくださるとてもいい先生でした。食育に熱心で、布おむつにこだわりがあり、石油から作られた紙おむつより布おむつをすすめられていました。
(大森由紀さん)当時からオーガニックコットンのナプキンを作って販売していましたので、「布ナプキンは布おむつと同じ原理だから(良いね)」と私たちを支持してくださったんです。
布ナプキンはできるだけ肌に優しいものをと思って、オーガニックコットンを使い、縫い目が当たらないように縫製にかなり配慮しています。もれない工夫と、取り扱いを簡単にして、忙しい女性も使い続けられるようにしました。
園長先生は「島根は共働きが多く、女性はとても忙しい。そんな女性の体に有益な布ナプキンの話をしてください。
その後で興味のある人に下着の話もするといいですよ」と言って、月に1回、保育園を無料で開放してくださいました。
そのとき、ヨガも一緒に教えました。そのうち「うちの保育園でもやってほしい」という声があがり、あちこちでヨガ教室と布ナプキンの話の会を行いました。
下着販売について一切触れませんでしたが、集まった方の中から「下着の試着会をしてほしい」という要望が出るようになり、徐々に試着会も行うようになりました。
(大森智彦さん)イベント開催でファンになってくださる方が増えて、ついには保健センターからも「ぜひやってほしい」と声がかかり、イベントを開催しました。
隣の市の保健センターでも呼ばれて、あちこちで開催しどんどん広まりました。車で広島や山口などへも行きました。1年間で4万キロ、地球一周と同じほど走ったこともあります。
(大森智彦さん)それと、テレビや新聞に出ることができたことも良かったです。創業した2013年はIターンが流行り出したときでした。その頃調査があって、IターンやUターンをして起業している人は、副業をやりながらがんばっているということがわかりました。
私たち夫婦は資金が少ない中でIターンしていたので、私は塾の講師、妻はヨガの先生という副業をやっており、Iターンの具体例としてぴったりだったようで、NHKのニュース番組で紹介されたり、新聞に取り上げられたりしました。商品の在庫を抱えて資金繰りが厳しく、宣伝もできなかったので本当に助けられました。
商品のこだわりについて
— オレンジハーモニーさんの商品のこだわりについて教えてください。
(大森智彦さん)高品質でもできるだけ安価になるように努力し、手頃な価格で販売しています。原価率はめちゃくちゃ高いので、自分達が大手下着会社出身だからわかるんですが、大手だとこの価格での同じ品質の販売は無理だと思います。
また、ブラジャーのパターンはひとつにしています。最初に高品質でいいものを作ったので、変える必要がないんです。
(大森由紀さん)肩紐を伸縮性のあるものにしたり、パターンを細部までこだわったり、ホックをサイズで変えたり、色・デザイン・レース・部材……ひとつずつ試行錯誤して納得できるものを作りました。
ブラジャーをつくるには20以上もの材料と、7台ものミシンが必要なんですよ。
海外でのモノづくりは品質管理が大変ですので、日本国内で小ロット生産にご対応いただける工場様で生産しています。中国や東南アジアで仕事したことで、海外のよさ、日本のよさ、両方を知ることができました。
— オレンジハーモニーさんの商品はどの年代の方向けとかあるんでしょうか?
(大森由紀さん)そもそも年齢別に商品のパターンを変える必要がないと考えています。
年代が上だからといって地味な色を選ぶ必要なんてありませんから。60代のあるお客様は「こんなきれいな下着をつけられてうれしい。鏡を見るようになりました」と喜ばれています。
以前その方が、温泉に行ったとき、同じくうちの下着をつけている若い人に出会われたそうです。温泉でかぶるほど広まっているなんて、うれしいなぁと思ました。
色にもこだわっています。新色をつくるときは、まず自分で染めてみます。染色メーカーさんに伝えるために、色見本を作って忠実に再現していただく必要があるので。
ブラジャーは何層も重なっているので、思いどおりの色に染めるのが難しいけど楽しいんです。
(大森由紀さん)お客様から色のヒントをもらったことがあります。どんな色を作ろう?と考えていたとき、お客様から「アメジストが欲しい」と言われました
調べると女性の石で、ストレス解消になる癒しの石でした。売れるかどうかわからないけど、ぜひやりたいと思いました。
とてもきれいな色にできて、よく売れています。
今後目指していきたい方向について
Q.2019年4月から大阪を拠点にされたとのことですが、島根と大阪では広まり方など違いはありますか?
(大森智彦さん)高齢の母との同居を考えて、2019年に大阪に拠点を移しました。仕事のやり方は変わっていませんが、クチコミでの広まり方が大阪の方が速いと感じています。
(大森由紀さん)島根にいた頃は当初下着販売のイメージがよくなかったので苦労しましたが、大阪は商品自体の良し悪し自体でスパッと判断されます。商品が悪ければ一切広がりませんが、いいと思えばクチコミで広めてくれます。
(大森智彦さん)それと大阪に来て実感したことですが、自分たちがその土地を離れた方が広まるようです。大阪に来てから、島根・広島で出張イベントを告知するとすぐ満席になります。大阪からわざわざ出向いてイベントをやっているという希少価値が出るんでしょうか。
— 確かに遠方からの出張イベントだとレアな印象があるのかもしれないですね!今後はどのような方向を目指しますか?
(大森由紀・大森智彦さん)今は満ち足りています。コロナ禍があって遠方に出張できませんが、これまでのような動きすぎをやめようと思い、ネットにもう少し力を入れる方向で準備をしています。
お客様に撮影の上手な方がいらして、ホームページの写真を撮ってもらいました。その方が「こんなに商品にこだわっているのだから、もっと伝えましょう」と言ってくれて、動画を作る予定です。
ネット上でももっと商品のことを伝えようと思います。
Webの勉強をしようと思ったきっかけについて
Q.WEBを学ぼうと思ったきっかけは?
(大森智彦さん)会社設立後、最初はWeb制作会社さんにホームページを作ってもらいました。そのホームページをちょこちょこ変えながら使い続けていましたが、スマホ対応もされていなくてだんだん見づらくなっていました。
それで大幅に変えたいと思ったんです。改めて制作会社さんにリニューアルを頼むとお金がかかるし、ちょっとした変更も都度依頼しないといけない。
それなら自分で一から作ろうと思いました。元々ブログをWordPressで作っていました。
WordPressでもっといろいろできそうだと思いましたが、自分一人でできるほど知識はなかったので、インターネットで検索していたところ、こちらのスクールを知りました。大阪に来て半年ぐらいのときでした。
— 実際に通ってみてどうでしょうか?
(大森智彦さん)こちらが要望することをどうずればできるのか、わかりやすく教えてもらえました。
通い始めて3ヵ月ほどでワードプレスにリニューアルできて想定よりも早く移行できました。
スマホ対応もできて、ネットの売上も伸びました。9割ほどはスマホからのお客様なので効果があったと思います。
また、できないこともはっきり教えてもらえ、気づかないことに気づかせてもらえました。当初やりたいことは全部できたので感謝しています。
— ちなみに当初のホームページとどのように変わったのですか?
(大森智彦さん)前のホームページはショッピングサイトの中にいろんな情報が入っていて、わかりづらかったと思います。買い物ページとそれ以外を分けたのでかなり見やすくできました。試着会ページを自由に作れるのも良かったです。
(大森由紀さん)先生のアドバイスで、問い合わせページに試着日程・時間希望などを追加したおかげで、お客様に日程調整の電話確認する必要がなくなり助かりました。
— WEBサイトは今後、どのようにしていきたいですか?
(大森由紀・大森智彦さん)今までは事業を軌道にのせるのに一生懸命で、余裕がありませんでした。やっと落ち着いてきたので、これから商品のことを詳しく伝えることができそうです。
ものづくりの情報を動画で入れたいと思います。工場を訪ねたりするのもいいですね。
(大森由紀さん)お客様の声がすごく溜まっているので活用を考えています。「イヤーキャンドル」も動画だともっと魅力が伝わると思うんです。私が実際に動画で伝えるのもいいなと計画中です。
これまで走り続けてきたけど、やっと落ち着いていろんなことができる段階になりました。
(大森智彦さん)今後も松本先生には相談させていただくと思います。よろしくお願いします。
お話ありがとうございました!これからも引き続きよろしくお願いいたします!
インタビューにご協力いただきましてありがとうございました!
大森夫妻は妻の大森由紀さんがお客様への対応を主に行い、夫の大森智彦さんがホームページ作成などのシステム面をご対応されております。
スクールでは、レンタルサーバーを契約後、先に仮ドメインで会社ホームページを構築。ある程度完成したのち、co.jpドメインの移管を行い、サイト移行を行いました。
さらにネットにも力を入れられるとのことでこれから頑張ってください!
大阪のランジェリーオンラインショップ「オレンジハーモニー」
オレンジハーモニーは100%オリジナルのランジェリーブランドです。実際にご試着いただくことを大切にしており、東京、大阪、兵庫、奈良、広島、岡山、山口、島根などで試着会を実施しています。
今回のインタビューアー
河本樹美(コピーライター)
大阪のコピーライター事務所
オフィスカワモト
今回の企画・撮影
松本 慶(スクール代表)
大阪のWebスクール・HP作成教室 WEBST8